提言8: 学校評価 〜「外部評価の実施と公表」

 これからの学校教育は、子どもの個性を伸ばし生きる力をはぐくむため、保護者・地域住民の協力あるいは参加を求め、ニーズに応えつつ学校運営への理解を得て教育を一定水準に保たなければならない。しかも自主的・自律的な学校運営によって教育の質の向上を目指すように努力しなければならない。そのために、学校評価を効果的に実施することが期待される。
 現時点では、学校評価は自己評価と外部評価の2方法によって行われている。自己評価とは当該校の教職員全員で行うものであり、外部評価は学校評議員、保護者、あるいは適切に評価できると判断できる年齢の児童・生徒が行うものである。

1 最近の「学校評価」実施例
T区のA小学校の例
・ 学校評価によって学校の教育の質的向上を願うためには、まず教職員の意識作りが大切である。そこで、教職員一人ひとりが本校の学校運営に参画しているという意識を高めることに力点を置いた。校務分掌に学校評価委員会を組織して、文科省の「学校評価ガイドライン」を参考にしてアンケートの設問を作成した。さらに、その委員会がアンケートの評価基準作成・集計・分析等を行っている。
・ 学校評価の項目数は少なめにしている。自己評価は「学校評価ガイドライン」の項目、指標を参考にして40項目程度の設問を作り、全教職員で評価している。外部評価用は20項目である。児童数180名程の学校なので、12名の学校評議員・全保護者・3年生以上の児童全員と全教職員が同じアンケートに答えている。自由記述欄を設定し、評価者から歓迎されている。
S区のB中学校の例
・ 自己評価は16項目、指標数は合計135。特に学校行事については各月毎の行事合計約100行事。これらを学校運営方針に沿って設問等を設定している。なお、外部評価は、学校評議員向けに20設問、保護者向けには20設問を設定している。生徒には学校評価としては行わず、「先生への通知票」として全生徒に自由に書かせている。
・ 学校評価の公表は、自己評価の結果は全体の傾向や際立っている事柄について学校評議員・保護者等に知らせる。また、外部評価の結果は設問毎にグラフにして学校評議員・保護者等に公表している。
・ 学校評価の公表は、自己評価・外部評価とも表あるいはグラフにしてパーセントで表している。外部評価の結果は、学校だよりで全家庭に配布するとともに学校公開日の校長の話の中で口頭で説明している。
・ 学校評価の結果は分析して、来年度の軌道修正あるいは新企画に活用している。

2 これからの学校評価の方向について
 これまでの学校評価重視の流れは、平成10年9月の中央教育審議会答申「今後の地方教育行政の在り方について」に端を発した。これを機に学校は、子どもの個性を伸ばし豊かな心を育むため、自主性・自律性を高め自らの判断で学校づくりに取り組み始めた。しかし、教育活動を理解されていない学校は保護者・地域住民の協力も信頼も得られない。そこで、平成14年3月、学校設置基準に、「各学校の自己点検・自己評価」及び「情報の積極的な提供」が規定された。さらに同年、学校教育法施行規則に「学校評議員の設置」が盛り込まれた。
 平成16年9月には、「学校運営協議会」が制度化された。平成18年3月に、「義務教育諸学校における学校評価ガイドライン」が出された。しかし、学校の主体性という視点から、各学校では「学校評価ガイドライン」の活用より独自の項目・指標を設定して評価を行うようになった。当然、同地区内学校においても自己評価・外部評価の実施・結果の公表に関してバラつきが生じていた。
 学校評価の方向が改めて示されたのは、教育基本法の改正に伴う学校教育法施行規則の一部改正である(平成19年10月)。これによる規定の概要は、
   @) 自己評価 〜 学校は自らを評価し、その結果を公表する。
   A) 学校関係者評価 〜 自己評価の結果を踏まえた評価を行い、公表する。
   B) 評価結果の設置者への報告 〜 @及びAの結果を設置者に報告する。
 このことにより、校長会は地区の教育委員会の指導を受けて、平成20年4月から地区の特色を生かしながらこの規定が徹底できるよう準備を始めていなければならないのである。

3 学校評価の客観性を高め、教育の質の保証・向上を目指す
 学校評価を実施するに当たって大切なことは、次の4点に分けて考える必要がある。
   @) 何を評価するか
   A) だれが評価するか
   B) だれに評価結果を公表・報告するか
   C) 評価結果を、どのように活用するか

 @)については、学校の評価委員会等を組織し、教育活動その他の学校運営の状況が評価されるように、学校は適切な項目を設定することが望ましい。文章表現の工夫も必要である。学校の教育活動に直接参画している教職員に対する設問は、自分自身の業績を反省するとともにその業務を学校の目標達成のためにいかにしたらより円滑に機能的に進められるか考えられるような評価指標を作成することが好ましい。一方、学校評議員・保護者等の学校関係者評価の評価者に対しての設問は、自己評価の結果を踏まえた内容を中心に、評価者による授業など教育活動の観察等で評価できる設問を作成することが望ましい。一般的なアンケートの実施で済ませることは評価の意味をも たない。設問数は20問程度に止めることが望ましいであろう。

 A)については、自己評価の評価者は当然学校にいる教職員である。教育という独特かつ専門的知識を必要とする学校においては、専門職としての教職員が、教育活動全体を総合的に評価し、具体的改善への方策を考えることが重要であろうとわれわれは考える。学校関係者評価の評価者は、当該学校の児童・生徒の保護者・地域住民の代表、必要に応じては大学教員等の有識者を加えることも考えられる。だが、人材数・必要経費等の問題を解消しなければならない。要は地域住民・保護者あるいは児童・生徒の実態を勘案して人選することが大切である。

 B)については、当然、評価者に公表・報告しなければならない。学校評価の結果の報告の形はいろいろあろう。学校評議員会や保護者会での説明、学校だより・学校ホームページ等で保護者のみならず地域住民にまで広く公表することができる。公表・報告データーは、生の数字のまま・割合にして、表やグラフで、考察を付けて、と工夫するとよい。なお、設置者である教育委員会にはヒアリングの際に、自己評価と学校評価者評価の結果をまとめて一つの報告書としての資料をもって報告することが好ましい。その際、結果の分析のみではなく今後の改善策を併せて報告することが大切である。

 C)については、最も大切な事柄である。学校評価は教育の質の向上を目指して行う努力の一環であるから、評価結果を活用しないと全く無意味な学校評価となってしまう。 評価結果を見ると、好ましい・普通・好ましくない、の3通りに分けられる。好ましくないという部分は学校として直さなければならないと思ってしっかりと読んで考えるが、普通という評価こそ注意して読まなければならない。普通の中には、ある部分は好ましいが、この部分は好ましくないという内容が含まれていることがあるからである。また改善については、緊急性、優先順位から考えて、今すぐに改善すべきこと、次年度改善すればよいこと、改善の努力をしていこうとすること、の3通りに分けられる。学校では評価結果をこれらのことを考えて、もっと大胆に改善することが大切である。

 学校評価の評価結果・考察と改善策とを併せて公表・報告している学校では、保護者・地域住民あるいは教育委員会から更なる期待や指摘が来てはいるが、その学校の努力が認められ、保護者・地域住民の理解と協力を得られるようになっている。
 学校は、子どもの個性を伸ばし生きる力をはぐくむために、積極的な攻めの学校運営を行い教育の質の向上を目指すように努力しなければならない。また、学校評価が、教員一人ひとりの学校運営参画意欲を高め、教育実践能力を高めることにつながることを願いたい。 そのために学校評価を効果的に実施するとともにより良い改善策を模索する必要がある、とわれわれは考えている。

 実践されている先生方のご意見等を、東京都教育会にお聞かせいただければ幸いである。

以 上   


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