提言103: 学力テスト10年真の学力を測れているか
 
 平成28年9月29日、文部科学省(以下「文科省」という)は、本年4月19日に実施した「全国学力・学習状況調査」(以下「学力テスト」という)の結果を公表した。
 学力テストは、東日本大震災で中止になった平成23(2011)年度を挟み、今年度で10年目である。小学校6年生と中学校3年生を対象に、文科省が平成19(2007)年度から始めた。国語、算数・数学は毎年実施し、平成24(2012)年度からは理科が3年に1度行われるようになった。
 今年度は、全国の国公私立小中学校の小学校6年生と中学校3年生を対象に計約207万人が国語と算数・数学の主として「知識」に関する問題(以下「A問題」という)、主として「活用」に関する問題(以下「B問題」という)に挑んだ。
 文科省の「全国的な学力調査に関する専門家会議」は、英語のテストを平成31(2019)年度から実施する方針である。「聞く」、「話す」、「読む」、「書く」という英語の4技能を測定する学力テストとなる。
 本提言では、「文科省による学力調査の経緯」、これまでの学力テストの調査結果公表によって引き起こされた「都道府県や市町村ごとの正答数・正答率競争の激化」、「A問題に比べてB問題に課題がある傾向」、「児童・学校質問紙と学力」などについて、筆者の見解を述べることにする。

1 文科省によるこれまでの学力テスト
 戦後、文科省による学力テストが行われるようになったのは、新しい教育に対する「学力低下」への危惧から発展した学力低下論争が起因である。特に、昭和36~39(1961~1964)年の中学生を対象とした一斉学力テストの実施によって、学校間の過度な競争による弊害、教育現場における政治的対立などが問題となった。
 昭和41(1966)年に学力テストは中止されたが、11年間にわたる調査結果は詳細に検討された。その後、教育環境・条件整備のための基本的なデータとして活用されたと考えられる。
(1)昭和31(1956)年に始まった戦後最初の学力テスト
 昭和31(1956)年に始まった戦後最初の学力テストは、昭和41(1966)年まで11回文科省によって実施された。学力テストが継続したことによって、他県や学校間の成績競争が過熱し、成績のふるわない児童生徒を当日休ませるなどの不正も横行した。また、中学校の学力テストが一斉調査に改められた昭和36(1961)年から、教職員組合を中心とした反対闘争が各地で激化した。学力テスト拒否等の闘争戦術に対して、起訴や懲戒処分などが行われた。さらに、学力テストの法的な適否等を巡って法廷でも争われるようになった。そのような状況が続き混乱する中で、昭和41(1966)年、旭川地方裁判所から「国による学力調査は違法」との判決が出された。その後、文科省による学力テストは中止された。しかし、多くの県教委や市町村教委による独自の学力テストはその後も実施されてきた。
(2)教育課程実施状況調査
 小学校及び中学校の学習指導要領に基づく教育課程の実施状況について、学習指導要領における各教科の目標や内容に照らした学習状況を把握し、今後の教育課程や指導方法等の改善に資することを目的に、昭和56~58(1981~1983)年度、平成5~7(1993~1995)年度、平成13~(2001~)年度には、教育課程実施状況調査が行われた。
(3)平成19年度全国学力調査実施に向けて
 平成19(2007)年度の全国学力調査実施の背景には、平成元(1990)年度以来進められてきた「ゆとり教育」とそれを巡る「学力低下論争」、「学力低下への危惧」が広がったことがある。また、平成15(2003)・平成18(2006)年のOECDが進めてきた国際的な学習到達度調査(PISA)において、日本の児童生徒の学力が、それまで世界のトップレベルから転落したことが明確になった。いわゆる(PISAショック:注1)も大きな影響を及ぼした。このPISAショックによって、日本の児童生徒の学力低下が一層問われるようになった。
PISAショックからの立ち直りを目指し、学校では習得した知識の活用、柔軟な思考力や表現力、問題解決の力などの育成を目指した。その結果、平成24(2012)年実施のOECD「PISA」では、日本の15歳(中学生)を対象とした読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野で正答率が向上し、これまで多かった無答率も減少した。また、この年の数学的リテラシー85題の日本の正答率は、平成18(2006)年の共通問題36題では、3ポイント高くなった。OECD平均も9ポイント上回った。さらに、無答率では平成15(2003)年の共通問題36題では4ポイント低下した。この結果から学力向上の兆しが見えてきたと考えられる。
 文科省はこの状況を踏まえ、平成19(2007)年度から学力テストの実施を決定した。
 平成19(2007)年度からの学力テスト実施に先だって、平成16(2004)年、当時の文部科学大臣中山成彬(なりあき)が、小泉純一郎首相(当時)に対し、全国学力テストの復活を提案した。この提案を受けて、学力テストに関する議論が再燃した。特に、学力低下の批判が高まっていたこともあって、学力テスト実施の方向へ進んでいった。
 平成17(2005)年10月の中教審答申では、全国的な学力調査が、学校評価システムと並んで成果検証の具体策として重要であると提言された。その後、PDCA cycle(plan-do-check-act cycle)は、Plan(計画)→ Do(実行)→ Check(評価)→ Act(改善)の 4段階を繰り返すことによる教育改革を進めるとともに、教育活動の結果を検証するものとして全国学力調査の重要性が唱えられた。
 平成19(2007)年度、全国の小学校6年生、中学校3年生全員調査を再開することになった。この年度から始まった学力テストは10年が経ち、都道府県の中には過度に正答率に拘る傾向が一層強まったように考えられる。
 
2 「都道府県別一覧表」の公表による競争の激化
 平成28年度の学力テストにおいても、平均正答数・正答率の「都道府県別一覧表」が公表された。これまで、一覧表の公表は教育委員会(以下「教委」という)、学校、保護者などの注目を集めてきた。今年度も、地方議会等では前年度からの順位や近県との比較が話題となっている。
 (1)平均正答数・正答率の都道府県別の一覧表公表
 文科省は正答率の比較が競争をあおっているとの指摘を受け、今回、正答率については小数点第1位以下を四捨五入した整数の表記に替えた。そして、細かい桁における微小な差異は、実質的な違いを示すものではないとの見解を示した。確かにその通りと考える。しかし、今年度も、「都道府県別の平均正答数・正答率のデータ一覧」が公表されると、都道府県教委、市町村教委、学校などは正答数・正答率のわずかな差に敏感に反応した。したがって、表示方法の見直しは単なる対症療法に過ぎなかったと考える。
 文科省は平成19(2007)年度第1回目の学力テストの導入に当たり、市町村や学校別の成績の公表を禁じた。しかし、従わない自治体が出てくると、なし崩し的に市町村教委の判断で公表することを認めるようになった。競争激化や序列化の歯止めは、なし崩しに外されてきたことになる。平成27(2015)年度、公立高校入試の内申書に学力テストの結果を反映させた大阪府教委に対しても、1年限りの例外としながら容認した。
 学習の成果と課題を把握して授業の改善に役立てるという学力テスト本来の目的は、見失われつつあるのが実態のように考える。平均正答数・正答率の都道府県別の一覧表や学校別の成績公表の拡大に伴って、現場への圧力は増している。「全てが点数で評価されるようになった」と話す教員も少なくない。
 なぜ全国一斉、一律のテストでなければならないのか疑問が残る。個々の児童生徒の学習の成果を確かめるためには、現場の教員が日々、目の前の児童生徒と協働して授業を創りあげるとともに、常に指導の改善を図ることが重要と考える。
(2)正答率を競う傾向が顕著
 平成28年度の各都道府県の公立学校の正答率は整数値、正答数は少数第1位で公表された。(9ページの資料「平成28年度 都道府県別の平均正答数・正答率(公立)一覧」参照)
 文科省は、各都道府県教委及び各指定都市教委会に対し、結果の分析・公表に当たって、「都道府県別の平均正答率を整数値で公表した意義」を配慮するよう依頼した。しかし、都道府県教委や市町村教委の反応はこれまでと変わらなかった。
 朝日新聞デジタル(平成28年9月30日付)は、「『教委の内々の指示で、4月に行われる調査の2カ月くらい前から、過去のテストを解く練習をしている』と現場の教員からの告発が文科省に寄せられた」と報じた。また、「4月中旬の学力調査前に3コマほどの授業で、前年度の問題を解かせたり、教委の内々の指示で、学年の仕上げ時期に当たる2~3月に過去の問題を解かせたり、授業時間にしわ寄せがある」などの実態も表出してきた。
 文科省は、以前の設問を指導に使うことは認めている。しかし、本番の学力テストを前に前年度までの問題を児童生徒に解かせたり、問題の傾向を知らせたり、慣れさせたりするのは「指導」ではなく、明らかな「学力テスト対策」である。このような状況が広がっている中で、文科省が目的としている「全国的な児童生徒の学力や学習状況の把握」が、真に把握できるのか、大きな疑問を持たざるを得ない。
(3)教育の場をゆがめる弊害
 昭和31(1956)年に始まった戦後最初の全国学力テストは、前述したように、他県や学校間の成績競争が過熱し、成績のふるわない生徒を当日休ませるなどの不正も横行した。
 学力テストの事前対策として、過去の問題を繰り返し解かせる学校は現在も少なくない。授業を差し置いて対策を講じる学校もある。現場の教員に、本末転倒だとの声はあっても、「平均点を上げなければ」という圧力にかき消されがちだという。その圧力が正答率を競い、「不正」にも結びついていると考える。
 信濃毎日新聞(平成28年10月1日付)は、「学力が低い子どもの答案用紙を除外する、別室でテストを受けさせて教員が答えを教える、といった事例も全国各地で相次いで明らかにされた」と報じた。教育現場でこのようなことが起きているとすれば、言語道断である。

3 学力テスト自治体間の格差が縮小とはいっても
 文科省は、本年度の学力テストを正答率(%)で見る成績は全体的に上昇し、上位県と下位県の差が縮小したと捉えている。特に、下位県の成績はこれまで以上に向上し、自治体間の格差が縮小したとしている。
 これまで、学力テストの結果は、47都道府県の中で最下位、あるいは30位以下となった県の教育関係者や保護者らに大きな衝撃を与えたてきた。正答数・正答率が低く、下位県と位置付けられた県は取り敢えず、正答数・正答率を上げるためにいろいろな対策を講じてきた。そうせざるを得ない下位県の取組は痛いほど分かる。しかし、通常の授業を行うよりも、過剰な量の過去の問題や類似問題を解かせたり、既に習った事項の復習を優先させたり、あるいは県・市町村教委の指導により、「チャレンジテスト」と称して、各小中学校に配布し、朝の自習時間や放課後に実施してきた実態もマスコミによって報道された。
 このように、県・市町村教委の指導とはいえ、過去の問題を繰り返し解かせたり、正答率を上げるために作られたテストを、授業を差し置いて繰り返し行ったりしたとしても、授業を改善するための資料を得ることは難しい。現場の教員から本末転倒だとの声はあっても、「正答率を上げなければ」という圧力にかき消されがち状況を考えると、何とも言えない憤りを持つだけである。
 こういう状況は、「義務教育の機会均等とその水準の維持向上の観点から、全国的な児童生徒の学力や学習状況を把握・分析し、教育施策の成果と課題を検証し、その改善を図る」という学力テストの目的に著しく反するものである。県教委や市町村教委も十分認識していたはずである。しかし、県教委や市町村教委の学力テストによって、全国学力テストに慣れさせ、正答率の向上を目指してきたことは、本当の意味の学力向上に繋がらないことを改めて認識し、学力テストが教員や児童生徒への圧力にならいように最大の配慮もって臨むことが重要である。現場の教員から「平均点を上げなければ」という過度な競争や序列化の弊害を一刻も早く解消していかなければ、成績上位県と下位県の格差が縮小したと、喜んでばかりいるわけにはいかない。
 文科省は、過度な競争や序列化の弊害が、年を追うごとに目につくようになっている実態を真摯に受け止め、通常の授業の充実を図る施策を講じることが重要である。その上に立って、児童生徒が主体的、意欲的に、「生きて働く知識・技能の習得」、「未知の状況にも対応できる思考力、判断力、表現力」を培うようにすること、「地域の人々との協働による教育」の実現を目指していくことなどが重要と考える。
 今後、これまでのデータの分析によって、得られた児童生徒の弱点や課題を明らかにし、日常の指導に生かすことが何よりも必要である。学力テストが教員や児童生徒にとって、「平均点を上げなければ」という圧力にならないよう最大の配慮をもって、教育の施策を講ずるようにしたいものである。
(1)上位県、下位県の平均正答率と全国平均
 文科省が公表した「上位県、下位県の平均正答率と全国平均」について、考えてみたい。
図表-1
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 図表-1は、平成19(2007)年度と平成28(2016)年度全国平均を「100」とした下位3県と上位3県の平均と全国平均を比べたものである。
 本年度の都道府県別の全自治体の平均を100とした場合、小学校では上位3県は各教科で102~102.5、下位3県は98.9~99.2である。
 学力テストが始まった平成19(2007)年度は、全国平均と下位3県の差は教科によっては最大2.5ポイントあったが、平成28年度はすべて1.1ポイント以内となった。中学校も最大3.7ポイントから2.3ポイントに縮小した。しかし、この結果から真に学力が上がったと捉えて良いのか疑問が残る。
 今年度も学力テストの結果が発表された直後、「平成19(2007)年度以降、県内の平均正答率は小中学校ともに低迷してきたが、小6は国語B、算数Aが初めて全国平均を上回った。中3も数学Aが全国平均と並んだ」、「これまで、小6は算数Bが全国で最下位など、全教科で40位台だった。今年度は4教科で全国との差が縮まり、過去10年の推移では最大7.0ポイントあった差が小さくなった」、「教科書だけでなく、新聞や本など様々な活字媒体を読む習慣がついてきていることも学力を押し上げているのではないか」など、県教委や市町村教委によるコメントが、マスコミによって報道され、今回も学力テストの結果に、悲喜こもごもの状況が全国に広がっている。
 文科省は、正答率(%)で見る成績は全体的に「底上げ」され、上位県と下位県の差は縮まった。学校の指導改善が一定の効果を上げたとしている。しかし、前述したように、平均点を上げるため本来の授業を削って過剰な量の過去の問題を児童生徒に解かせる自治体や学校も相次いだことから考えると、真の学力が備わったのか甚だ疑問である。また、上位県は毎回固定化の傾向にある。日々の地道な取り組みの成果が出ているのであれば良いと考えるが、上位を保つために、児童生徒に必要以上のプレッシャを掛けていないか、気にかかることでもある。
 本年度の学力調査で、I県の平均正答率は小学校6年が4教科のうち3教科で全国1位だった。中学校3年も2教科で全国2位であった。このことについて、「地道な取り組みの成果が出ている。教員への指導と児童生徒の学ぶ環境の充実を両輪として教育の向上を図っていきたい」と県教委学校指導課の談話は納得できる。また、学力テストと同時に実施された学習状況調査でも、I県内の児童・生徒が図書館の利用や新聞を読む割合が高いことが浮かび上がっている。このことから、本来の学力は、児童生徒の実態をしっかり捉え、それに基づいた授業構成の環境を整え、常に「現在と未来を生き抜く力」をどのように培うか、学校としてのグランドデザインを構築することが何よりも重要である。
(2)下位県3県成績の推移
 下記の図表-2は、下位3県の成績の推移である。全国平均を100とした場合の数値である。平成22(2010)年度、平成24(2012)年度は全員参加ではないため除外、平成23(2011)年度は東日本大震災のため中止された。
図表-2
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 左図を見て分かるように、下位県3県の成績は年々上昇している。前年度と今年度の正当率を比較すると、小学校6年国語A問題、国語B問題、算数A問題の3種、中学校3年、数学A、数学B問題の2種が前年度より上昇した。これらのデータから成績の底上げ傾向が見られるという文科省の捉え方は理解できる。また、喜ばしいことであるかも知れない。しかし、前述したような問題点(過去のテストを解く練習等)があったことは気にかかる。
 一方、下位県教委の指導主事が学力の「先進地」とされる上位県の学校現場を訪ね、授業改善に向け教師への具体的に助言を得るなど、普段の授業デザインについてのアドバイスを受け、教員の研修を地道に行ったなども実際に報告されている。学力向上には、児童生徒の実態に基づいて、教育環境を整備し、教員自身の主体的、意欲的な授業実践に関わっていることを重視していかなければならない。

4 A問題の成績は良いがB問題に課題
 今年度の全国平均正答率を見ると、小学校の国語ではA問題が73%、B問題が58%、算数A問題が78%、算数B問題が47%、中学校の国語ではA問題が76%、B問題が67%、数学A問題が62%、数学B問題が44%、小中学校いずれも、B問題がA問題を9~31ポイント下回っている。平成19(2007)年度の学力テスト開始以来毎回指摘されてきた課題である。文科省は正当率70%未満を「課題がある」と位置付けているが、今年度も、「基礎的な知識(A問題)は小中学校とも良好であったが、応用力(B問題)は、各教科の正答率が、前述したように40%~60%台で、記述式や資料から情報を読み取る問題に課題が見られた。これまでの学力テストと同様の結果である。
 現在、文科省は平成32(2020)年度に小学校から実施される学習指導要領の全面改定作業を進めている。児童生徒が主体的に課題を探求し、他者とも協力して解決する。「アクティブ・ラーニング」を基本理念に据えるが、「生きて働く知識・技能の習得」、「未知の状況にも対応できる思考力・判断力・表現力」の育成などを図っていかなければならない。
 グローバル社会で活躍する人材を育成するには、思考力や表現力を高めることが欠かせないからである。一方的に教師が教える授業を見直し、討論や対話を重視する学習方法を取り入れることが求められている。

5 児童生徒質問紙による考察
 学力調査と同時に実施された学習状況調査の結果では、児童生徒が図書館の利用や新聞を読む割合が高いほど、また、授業においては学級やグループが分たちで課題を見付けたり、その解決を目指して情報を集めたり、話合いをしたりしながら学習活動に取り組んだ児童生徒の平均正答率が高かった。
(1)新聞を読む頻度と平均正答率の関係
図表-3
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 図表-3は、「新聞を読む頻度と平均正答率の関係」である。児童生徒の質問紙「問題37 新聞を読んでいますか」の問いに対して、「ほぼ毎日読む」と回答した小学生は9.0%、中学生6.7%、「週に1~3回」は小学生15.2%、中学生12.0%、「月に1~3回」は小学生21.2%、中学生17.6%、「ほとんど、または、全く読まない」は小学生54.5%、中学生63.5%だった。このうち、新聞を毎日読む小学生の国語Bの平均正答率は64.8%で、読まない小学生より9.7ポイント高かった。中学生の数学Bの平均正答率は、新聞を毎日読む生徒が51.9%で、読まない生徒より9.4ポイント高かった。
 新聞を読む頻度が高いほど正答率も高くなっていることが明らかになった。新聞を読むことにより、世の中の状況を捉えたり、判断したりする力が備わってきたものと考えることができる。
(2)課題に立脚した学習と発表との関係
図表-4
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 図表-4は小学校6年生と中学校3年生に対する質問紙による問題「5年生まで[1、2年生のとき]に受けた授業では、学級やグループが自分たちで課題を立てて、発表するなどの学習活動に取り組んでいたと思いますか」の問いに対する回答をまとめたものである。
 この回答結果から、「当てはまる」と「どちらかといえば、当てはまる」をあわせると小中学校とも70%を超えている。児童生徒は、肯定的な回答を選択したことが分かる。児童生徒の主体的、対話的に学習を深めていこうとする学習態度が備わってきたと解釈することができる。
(3)選択肢毎の平均正答率
図表-5
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 図表-5は、中学校数学Bの「当てはまる」の正答率は51.1%、「どちらかといえば」の正当率は45.5%両方合わせて96.6%である。この正答率を、国語Bで比較すると、44.1ポイント低い。小学校国語Bとでは25.5 ポイント、算数Bとでは、3.4ポイント低い。したがって、児童生徒質問紙に対して、肯定的な回答を選択した児童生徒の方が多い。また、正答率で見ると、「自らが設定する課題や教員から設定される課題を理解して授業に取り組んでいると思う」と回答している。しかし、そう捉えていない児童生徒が一定の割合で存在することも考えられる。今後、教員が一方的に授業を進めるのでなく、児童生徒が、主体的、対話的な学習の場を自ら構成できるように教員が支援し、問題解決の学習を推進していくことが重要である。

6 学校質問紙による考察
 学力テストと同時に実施した学校質問紙による調査では、就学援助を受けている児童生徒の多い学校ほど、平均正答率が低い傾向が明らかになった。
(1)質問紙問題と回答の結果
 「質問番号20:児童生徒は自ら設定する課題や教員から設定される課題を理解して授業に取り組むことができていると思いますか」の問いに対して、就学援助率(①在籍していない ②5%未満 ③5%以上10%未満 ④10%以上20%未満 ⑤20%以上30%未満 ⑥30%以上50%未満 ⑦50%以上)など、7項目の選択肢から選択し回答を求めた。
(2)回答の結果
図表-6
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 回答の結果、就学援助率に関わらず、学習指導の改善に向けた取組に沿った学習を児童生徒ができていると回答した学校の方が、平均正答率が高くなっていることが明らかである。
 今回の調査で、就学援助を受ける児童生徒の割合と正答率の関係や保護者への調査により、家庭の経済力が児童生徒の学力差を生んでいることを、真摯に受け止めその対応策を講じることが重要である。

7 全国学力テストから学力の全てを把握することは困難
 学力テストで測れる学力は、児童生徒の学力の一面に過ぎないことを見落としはならない。県・市町村委教や学校が狭い学力観にとらわれて、正答率を上げるために教員や児童生徒に圧力をかければ、学校は息苦しさを増し、主体的に他者と共に学ぼうとする意欲や向上心は、次第に失われてしまう。これまでの学力テストによって、主としてB問題に関する出題の工夫によって、思考力や判断力はある程度把握ができるようになってきた。しかし、自ら問題を見つけて他者と協力して解決する力や、未知の状況に対応できる思考力、判断力などを把握するまでに至っていないことに大きな課題がある。
 学力テストは、幅広く児童生徒の学力や学習状況等を把握することなどを目的として実施されてきたが、実施教科が国語、算数・数学、3年ごとに理科の3教科のみであるため、必ずしも学習指導要領全体を網羅するものではない。したがって、児童生徒が身に付けるべき学力の特定の一部分であること、学校における教育活動の一側面に過ぎないことに十分留意することが重要である。
 現在、学校や教員は「学力」に振り回されているように思えてならない。学力向上を目指すことは重要である。しかし、現在全国学力テストをはじめ、都道府県や市町村等の学力テストも年に何回となく行われていることは、周知の事実である。学力テストの正答率を引き上げることが、生き抜く力を育成することに繋がる学力になるとは考えにくい。したがって、学力テストによって、児童生徒の全ての学力を把握することはできないということを、しっかりと認識して学力テストの分析、考察をすることが重要である。
 これまでの調査結果を分析し、考察することによって、「確かな学力」とは何かについて再度検討し、吟味しその上に立って学力観を共有することが重要である。

8 学力テストを毎年行う必要があるか
 小学校6年、中学校3年の大半が取り組む学力テストを続けてきたことによって、学校では過去の出題問題を解く練習をしたり、都道府県間の競争が激化したりするなど、教育現場が混乱している実態が明らかになった。
 学力テストの本来の目的である全体的な学力傾向を把握するには、抽出調査で十分と考えられる。10年間にわたる学力テストの結果を真摯に検討することが必要である。また、学力テストを毎年行う目的は何か明確にすべきである。数年に1度でも良いと考えるからである。実際に理科は3年に1度の実施である。
 毎年、全員参加の大きな弊害は、過去の問題を解かせたり、点数を上げたりするめための対応に走り、点数が上がれば良いという「学力コンクール化」が止まらないことである。この10年間の結果を検証し、制度を見直すことが必要な時期になっていると考える。
 全国学力テストの予算は1回につき約50億円である。回数や抽出方法を再考し、この金額を就学援助等に振り向ける施策の工夫が必要と考える。

◆ 注釈
1:OECD生徒の学習到達度調査(PISA:Program for International Student Assessment)とは義務教育終了段階で身につけた知識や技能が実生活の様々な場面で直面する課題にどの程度活用できるかを評価するものであり、読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシー主体とした調査のことである

 ◆ 参考・引用文献
 1:「平成28年度全国学力・学習状況調査」の調査結果、質問紙、解説資料
 2:「平成28年度全国学力・学習状況調査」の調査概要
 3:「平成27年度全国学力・学習状況調査」の調査結果、質問紙、解説資料
 4:中教審答申(平成17年10月)
 5:東京都教育会提言68:OECD生徒の学習到達度2012年調査の結果と課題
 6:小学校学習指導要領(平成元年、平成11年、平成20年)
 7:読売新聞、朝日新聞デジタル、毎日新聞デジタル、産経新聞デジタル、東京新聞デジタル、信濃毎日新聞デジタル、南日本新聞デジタル、西日本新聞デジタル、日本経済新聞デジタル、中国新聞デジタル、琉球新報デジタル
 8:読売新聞・朝日新聞・日本経済新聞
資料:「平成28年度 都道府県別の平均正答数・正答率(公立)一覧」
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( 2016/11/19)  

以 上