提言114:発達障害と特別支援教育について考える

 

 

 平成29年9月8日、読売新聞(夕刊)は、「発達障害を抱える人やその家族への支援を行う専門機関“発達障害者支援センター”に寄せられた相談件数が昨年度、7万4000件を超え、過去最多となったことが厚生労働省のまとめで分かった。」と報じた。

 厚生労働省(以下「厚労省」という)によると、発達障害のある人は、その疑いがある人も含めると全国に約700万人いると推定されている。

 厚労省における発達障害者支援策として、発達障害者支援センター(以下「センター」という)が、平成14年度より国の施策として発足した。

  センターは、自閉症スペクトラムなどの発達障害のある人とその家族が、安心した暮らしを営むことができるよう、保健、医療、福祉、教育、労働などの関係機関と連携し、地域における総合的な支援ネットワークを構築しながら、発達障害のある人とその家族からの様々な相談に応じ、指導と助言を行うことを目的とした地域の専門的機関である。センターは、全国各地に平成29年7月現在92か所設置されている。

 平成24年12月5日、文部科学省(以下「文科省」という)は、「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査結果」を公表した。

 調査の目的に、「特別支援教育が本格的に開始されてから5年が経過し、その実施状況について把握することが重要である。…」と記述されているように、通常の学級に在籍する児童生徒の知的発達の遅れを早期に見いだしたり、特別な教育的支援を必要とする児童生徒の実態を明らかにしたりすることが重要である。また、今後の特別支援教育施策の在り方や、特別支援教育の充実を図るためにこの調査結果を有効に活用することも必要である。

 調査結果から、小・中学校の通常学級の児童生徒の約6.5%程度が発達障害を抱えて在籍している可能性のあることが分かった。

  発達障害者(児)への支援や特別支援教育について、筆者の見解を述べてみたい。

 

1.発達障害とは

 発達障害とは、発達障害者支援法(最終改正:平成28年法律第64号)によって、「自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群、その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害、その他これに類する脳機能の障害であって、その症状が通常低年齢において発現する者」と定義されている。

  この法律において、発達障害者とは、「発達障害がある者で発達障害及び社会的障壁により日常生活又は社会生活に制限を受ける者」、発達障害児とは、「発達障害者のうち18歳未満の者」と定義されている。

 この法律は、発達障害者の心理機能の適正な発達及び円滑な社会生活を促進するために、発達障害の症状の発現後、早期に発達支援を行うとともに、切れ目なく支援を行うことが重要であるとし、障害者基本法(最終改正:平成23年8月5日)が公布・施行された。

 国及び地方公共団体は、障害者基本法の理念に基づいて、発達障害者が基本的人権を享有する個人としての尊厳にふさわしい日常生活や社会生活を営むことができるよう、発達支援の施策の推進に務めなければならない。

 学校教育における発達障害の児童生徒への支援、発達障害者の就労への支援などは、センターにおいても行われている。これにより、発達障害の児童生徒(者)の自立及び社会参加のための生活全般にわたる支援を図り、全ての国民が障害の有無によって分け隔てられることなく、相互に人格と個性を尊重し合いながら共生する社会の実現を目指していかなければならない。

 人は誰しも、得意なことや不得意なことはある。その中でも発達障害のある人は、得意なこと不得意なことの差が非常に大きかったり、他の多くの人と比べて違った物事の感じ方や考え方をしたりすることが多くある。そのため、勉強や仕事の理解や進め方、注意の集中や持続の偏り、対人関係でのすれ違いなど、生活に支障を来すことが極めて多い。発達障害を理解する上での難しさは、その障害が見た目からは分かりにくいことにある。本人は悪気がなく行動しているつもりでも、「衝動的でわがままだ」、「人の話を聞けない変わった人だ」などと誤解を受けたり、「本人の努力不足」や「親のしつけの問題」などと誤った解釈や批判を受けたりすることも少なくない。

 一方、平成5年に「心身障害者対策基本法」が「障害者基本法」に改められたことに伴い、「心身障害者」という表現は使用せず単に「障害者」とすることになった。したがって、「障害者」とは、身体または精神に相当程度の障害をもつ人の総称である。

 障害者基本法 第2条には、この法律において障害者とは、「身体障害、知的障害、精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害がある者であって、障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にある者をいう。」と定義されている。

 

2.発達障害と知的障害の違い

 発達障害は、前述したように、発達障害者支援法に定義されている障害であり、脳機能の障害が原因となっている。

 一方、知的障害は法律による定義はないが、知的能力に障害があり、何らかの支援が必要である。その知的な障害のほとんどが発達期(18歳未満)で生じるとされている。知的障害の約80%は原因不明である。残りの20%は、染色体の異常等の先天性知的障害、出産時の酸素不足やトラブル、乳幼児期の高熱などが原因となっている。

▼ 図表-1 発達障害と知的障害

よってA(最重度・重度)、B(中度・軽度)のどちらかが記載される。療育手帳を持っていると受けられるサービスや支援が多くなる。教育面、金銭面をはじめ、将来の就労まで支援してくれる大切な制度であるが、複雑で地域によって差異があるので分かりにくいという声も聞かれる。

 

3.発達障害の分類

 「発達障害」と一言で言っても、その種類はいくつもある。発達障害者支援法によって、定義されている障害を分類すると、「図表-1 発達障害と知的障害等」の概念図のように「広汎性発達障害(PPD)」、「学習障害(LD)」、「注意欠陥多動性障害(ADHD)」など、3つに分類することがきる。

(1)広汎性発達障害(PDD)

 広汎性発達障害は、コミュニケーションと社会性に障害があり、限定的・反復的な行動が特徴として分類される発達障害のグループである。このグループには自閉症スペクトラム、アスペルガー症候群のほか、レット障害、小児期崩壊性障害、特定不能の広汎性発達障害など、5つの障害が含まれている。

 ① 自閉症スペクトラム(ASD)

  自閉症スペクトラムは先天的な発達障害で、「社会性と対人関係の障害」、「コミュニケーション

 や言葉の発達の遅れ」、「行動や興味の偏り」などの特徴が発達段階で現れる。文科省によると、自

 閉症スペクトラムは3歳位までに現れ、「ア 他人との社会的関係形成の困難さ」、「イ 言葉の発達の

 遅れ」、「ウ 興味や関心が狭く特定のものにこだわる特徴をもつ」などの行動の障害であり、中枢神

 経系に何らかの要因による機能不全があると推定される」と定義されている。

 自閉症スペクトラムは、専門医の問診と様々な検査を総合して診断される。

 ② アスペルガー症候群(AS)

  アスペルガー症候群は、比較的最近になって理解され始めた発達障害である。対人コミュニケー

 ション能力や社会性、想像力に障害があり、対人関係がうまくいきにくい障害で、知的障害や言葉の

 発達の遅れはない。何らかの脳機能の障害と考えられている。

 ③ 特定不能の広汎性発達障害(PDD-NOS)

  特定不能の広汎性発達障害は、自閉症スペクトラム障害やアスペルガー症候群など、他の広汎性発

 達障害の特徴がみられるが、それらの基準を満たさない場合に診断される障害である。自閉症スペク

 トラムの症状があり、知的障害の症状も顕著な場合、知的障害者として認定される場合が多い。

 ④ レット障害(AR)

  レット障害は、女の子のみに発症する遺伝子が原因の疾患である。生後6か月から1歳6か月頃に発

 症し、それまでできていたことができなくなってしまう退行の症状などがある。病気の治療方法は見

 つかっていないため、国の難病として指定されている。

  厚労省の調査によると、全体の推定患者は約5000人、20歳以下の患者の数は約1020人であり、1

 万人のうち0.9人の割合の女児がレット症候群に罹ると報告されている。

 ⑤ 小児期崩壊性障害(CDD)

  小児期崩壊性障害は、これまで正常に発達していたのに突然、成長の過程で覚えた言葉や排泄能力

 などを失い、最終的には知的障害を伴った自閉症スペクトラムのような状態になる障害である。小児

 の0.005%に発症するまれな障害であり、発症前までは元気に成長するため、戸惑う家族も多くいる

 と考えられる。

(2)学習障害(LD)

  学習障害は、主に識字障害(読みの困難)、書字表出障害(書きの困難)、算数障害(算数、推論の困難)の3つに分類される。「聞く」、「話す」、「読む」、「書く」、「計算する」という5つの能力の全てに必ず困難があるのではなく、一部の能力だけに困難がある場合が多い。読む能力はあっても書くのが苦手、他の教科に問題はないが、算数だけは理解ができないなど、ある特定分野に偏りが見られる。知的発達に大きな遅れはない。

 ① 識字障害

  識字障害の人の中には「見た文字を音にするのが苦手」という症状がある。その原因は、情報を伝

 達し処理する脳の機能がスムーズに働いていないことだと考えられている。文字の見え方にも特徴が

 あり、文字がぼやける、黒いかたまりになっている、逆さまに見える、図形に見えるなど違った見え

 方になってしまい、認知の仕方が異なるのである。

  また、音韻認識が弱く、ひらがなやカタカナの1つずつは理解していても、漢字(単語)になると

 理解ができなくなってしまうこともある。つまり、漢字の音読みと訓読みの使い分けができず、単語

 や文節の途中で区切った読み方をするなど、変わった読み方をしてしまうからである。

 ② 書字表出障害

  「文字が書けない」「書いてある文字を写せない」などの書く能力に困難がある学習障害を書字障

 害と呼んでいる。文字が読めるにもかかわらず書けない場合も書字障害に分類される。

  書字障害の人は、自分では文字を正確に書いているつもりなのに鏡文字になってしまうなど、文字

 を書くという動作が苦手である。原因としては、脳内で身体に指示を出し、手を動かすという伝達機

 能がうまくいっていないからだという説が有力である。

 ③ 算数障害

  数字や数式の扱いや、考えて答えにたどり着く推論が苦手な学習障害を算数障害と呼んでいる。数

 字に関する能力にのみ障害がある人が多いため、算数の学習を始めてから発見される場合がほとんど

 である。

  算数障害の人は数字そのものの概念、規則性、推論が必要な図形の領域を認識するのが難しい。ま

 た、視覚認知の機能が弱く、数字を揃えて書く、バランスを考える、文字間の距離感を取るなどが苦

 手である。

 ④ 特定不能の学習障害

  特定不能の学習障害は、自閉症スペクトラムやアスペルガー症候群など、他の広汎性発達障害の特

 徴がみられるが、それらの基準を満たさない場合に診断される障害である。

(3)注意欠陥多動性障害(ADHD)

  注意欠陥多動性障害は、不注意、多動性、衝動性など3つの要素がみられる障害である。幼児であればこれらの要素は誰にでも見られるものなので、周囲の人に障害として理解されにくく、乱暴者や親のしつけができていない子供などと誤解を受けてしまうケースが多い。

 ① 不注意優勢型

  不注意優勢型は、注意欠陥多動性障害の中では最も軽度な障害で、比較的女性に多い。時間をかけ

 れば学業においてもどうにかついていくことができる。したがて、大人になっても自分が注意欠陥多

 動性障害だったと気付く人は少ないようである。

  「もしかしたら自分は何か問題があるのかもしれない」と、気付く場面が来るのは、働き始めてか

 らがほとんどである。業務において、「要領の悪さ」や「仕事のできなさ」などが目立ってくるた

 め、会社から診断を勧められることが契機となって、発覚する場合が多い。

 ② 多動性・衝動性優勢型

  学校や職場でトラブルを起こしやすく、それが原因で孤立してしまう可能性がある。また、癇癪を

 起こしやすくなり、反抗的・挑発的な行動を起こしてしまう場合もある。

  そのままの状態で成長すると、欲しい物を手に入れるため、お金を親の財布から盗んで買ってしま

 うことや、店の商品自体を万引きしてしまうこともある。したがって、早期に注意欠陥多動性障害で

 あることに気付き、支援をすることが必要である。

 ③ 混合型

  混合型は、注意欠陥多動性障害の特徴・症状は、不注意優勢型と多動衝動性優勢型の特徴・症状に

 加えて、「落ち着きが無く、じっとしていられない、ソワソワと周囲を見渡してしまう」、「衝動を

 抑えられなく、順番やルールを守れない」、「言いたいことを言えず、我慢してイライラする」とい

 う特徴がある。

 

4.特別支援教育の充実

 平成19年4月1日、学校教育法改正に伴い特別支援教育が始まった。以前の特殊教育における支援対象であった児童生徒に加えて、学習障害等の発達障害のある児童生徒への教育的支援が開始された。

 改正の趣旨には、「児童生徒等の障害の重複化に対応した適切な教育を行うため、現在の盲・聾・養護学校から障害種別を超えた特別支援学校とするなどの改正を行う。」と明記されているように、盲学校、聾学校、養護学校が障害種別を超えた特別支援学校に一本化された。

 平成23年5月1日現在、義務教育段階において特別支援学校及び小・中学校の特別支援学級の在籍者、並びに通級による指導(注1)を受けている児童生徒の総数の占める割合は約2.7%となり、特別支援学校や特別支援学級に在籍している幼児、児童生徒が増加する傾向にある。

 したがって、特別支援学校においては、在籍児童生徒に対して適切な教育を行うほか、障害のある児童生徒の支援をさらに充実していかなければならない。

 それには、現職教員の研修の受講等により、基礎的な知識・技能の向上を図る必要があるが、すべての教員が多岐にわたる専門性を身に付けることは極めて困難である。したがって、必要に応じて外部人材の活用も行い、学校全体としての専門性を確保していくことが重要である。

 特別支援学校の担当教員は、特別支援教育の重要な担い手であり、その専門性が校内の他の教員に与える影響も極めて大きい。そのため、担当教員としての専門性を早急に身に付けるとともに、児童生徒一人一人に寄り添った支援ができる心の豊かさも培っていかなければならない。

 一方、文科省をはじめ、各教育委員会は、特別支援教育に携わる教員や優れた人材が集まる改革、特別支援教員定数の拡充、予算面での支援などを通じて、特別支援学校、特別支援学級の充実を図るとともに、発達障害者と健常者が共生できる未来社会を創り上げていくことが重要である。

(1)特別支援学校

 特別支援学校が発足してから10年が経過した。

 東京都立特別支援学校長会会長 朝日滋也 校長は、東京都教育会 会報第132号において、「発達障害に対する認知度が進み、支援の必要な児童生徒への理解と具体的な支援が全ての学校で検討されるようになりました。」と記述しているように、複数の障害がある幼児、児童生徒の教育ニーズに応えたり、自立を促したりするために必要な支援が充実し、進展していると考えられる。

 一方、より早期からの専門的な助言援助を希望する保護者の要望に対して、関係機関の一層の努力が必要である。

(2)特別支援学級

 平成21年2月、文科省は1126号通知によって、従前の情緒障害特別支援学級の名称を「自閉症・情緒障害特別支援学級」と変更した。変更の理由は、自閉症スペクトラムと情緒障害の違いをより明確にし、それぞれに対応した適切な支援を行うことが必要となったためと考えられる。

 「自閉症・情緒障害特別支援学級」では、情緒の安定を図り、円滑に集団に適応していくことなどができるようにするため、多様な状態に応じた指導を行うことが重要である。

 基本的な生活習慣の確立を図ること、適切に意思の交換を図ること、円滑な対人関係を築く方法を獲得すること、目標をもって学習に取り組むこと、不登校等による学習上の空白を埋め基礎的・基本的な学力を身に付けることなど、個々の児童生徒によって指導目標や指導内容・方法を変えていかなければならない。

▼ 写真-1 特別支援学級の数学の授業

員会、教育コーディネーターが設置され、校内の支援体制を確立したり、拠点校の専門家や教員等の派遣要請をしたりするなど、連絡調整に携わっている。

 拠点校の専門家や教員は児童生徒の在籍する学校を巡回して指導することになっている。児童生徒は在籍する学校の特別支援教室や在籍学級で指導を受ける。

 

5.発達障害者支援センターの役割

 発達障害児(者)支援については、平成17年4月に施行された「発達障害者支援法」に基づき、乳幼児期から成人期までの各ライフステージに対応した支援の推進を図ってきた。センターの役割は大きく分けて4つある。

(1)相談支援

  発達障害児(者)とその家族、関係機関等から日常生活での様々な相談(コミュニケーションや行動面で気になること、幼稚園・保育園等や学校、職場で困っていること)などに応じる。また、必要に応じて、福祉制度やその利用方法、保健、医療、福祉、教育、労働などの関係機関への紹介も行う。

(2)発達支援

 発達障害児(者)とその家族、周囲の人の発達支援に関する相談に応じ、家庭での療育方法についてアドバイスを行う。また、知的発達や生活スキルに関する発達検査などの実施、発達障害児(者)の特性に応じた療育や教育、支援の具体的な方法について支援計画の作成や助言を行うこともある。その際、児童相談所、知的障害者更生相談所、医療機関などと連携を図る。

(3)就労支援

 就労を希望する発達障害者に対して、就労に関する相談に応じるとともに、公共職業安定所、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センターなどの労働関係機関と連携して情報提供を行う。必要に応じて、センターのスタッフが学校や就労先を訪問し、障害特性や就業適性に関する助言を行うほか、作業工程や環境の調整などを行うこともある。

(4)普及啓発・研修

 発達障害をより多くの人に理解してもらうために地域住民向けの講演会の開催、発達障害の特性や対応方法などについて解説した分かりやすいパンフレットやチラシなどを作成し、保健、医療、福祉、教育、労働だけでなく、交通、消防、警察などの公共機関や一般企業などに配布することもある。また、普段から発達障害を支援する保健、医療、福祉、教育、労働などの関係機関の職員や、都道府県及び区市町村の行政職員などを対象に研修を行う。

 

6.障害者 卒業後も自立支援

 平成29年9月19日、読売新聞(朝刊)は、「文科省は、特別支援学校を卒業した18歳以上の障害者の自立を支援するため、集団での体験学習やスポーツ・文化活動による地域交流を通じたプログラム開発に着手する。」と報じたように、文科省は、平成30年度、障害者支援に積極的に取り組む自治体や大学などに自立支援のモデル事業を委託し、成果や課題を分析して全国への普及を目指すようである。

 障害者が、学校卒業後もその生涯を通じて教育やスポーツ、文化等の様々な活動に参加し親しむことは、非常に重要な自立支援につながると考える。

 自立支援に積極的に取り組む自治体や大学等が連携できる環境を形成し、福祉・労働行政機関、企業等との組織的ネットワークの構築を図るとともに、支援手法の開発・調査、研究等を行い、それらの成果を現場への普及・共有を図っていくことが重要である。

乳幼児期から青年期の社会参加までの切れ目のない支援体制の整備、継続的に発達支援・相談等を行う体制の整備、特別支援教育専門家等配置、特別支援教育の体制整備の推進を図ることが、今、最も重要な懸案であると考える。

 

◆注釈

  注1 通級による指導:小学校又は中学校の通常の学級に在籍している軽度の障害のある児童生徒に

            対して、主として各教科等の指導を通常の学級で行いながら、障害に応じた

            特別の指導を特別の指導の場で行う指導形態である。

 

♦ 引用参考文献

 1 「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関す

   る調査結果」(文科省)

 2 LITLICO発達ナビ(デジタル版)

 3   「DSM-IV-TR 精神疾患の診断・統計マニュアル」(デジタル版)2004年医学書院刊訳:高橋

   三郎 /大野 裕/染矢 俊幸

 4   「東京都発達障害教育推進計画」の策定について

 5   「10年目の節目を迎える特別支援教育」(東京都教育会会報 第132号)

 6 読売新聞

                                        2017.10.13

 図表-1(出典:Google画像)は、発達障害の種類と知的障害等を概念図で表したものである。

知的障害の診断は、知能テスト等で測定される。知的障害は度合いによって、最重度・重度・中度・軽度に分けられる。知能指数(IQ)=精神年齢(発達年齢)÷生活年齢(実年齢)×100による比率で算出される。50~70%は軽度、35~50%は中度、20~35%は重度、20%以下が最重度と分類されている。また、知能指数が70~ 85%の場合はボーダーラインであり、知的障害と認定されない場合が多い。軽度の知的障害では、障害があることが見ただけでは分かりにくいこともある。

 知的障害者として認定されると、療育手帳が交付される。療育手帳には、知的障害の程度に

写真-1(出典:Google画像)は、特別支援学級の数学の授業である。

 それぞれ課題別に上級生・下級生で協力しながら取り組んでいる。プリント学習をする生徒、コンピュータを使用して学習する生徒などである。

 各区市町村には、「特別支援学級の拠点校」が設置されている。通常の学校に在籍する児童生徒への支援体制を強化するためである。そして、各学校には、特別支援学級の校内委